遊びと学び 2019年3月17日

ライブラリーを校舎の真ん中にした理由

岩瀬 直樹
投稿者 | 岩瀬 直樹

2019年3月17日

3月3日(日)に英治出版のEIJI PRESS Labにて、Library Labキックオフイベントを開催しました。司書教諭や司書の方たちと教員、図書館や本に関係する参加者が混ざり、これからの学校図書館の可能性について対話しました。会の中での岩瀬の話を一部抜粋して紹介します。

なぜライブラリーを校舎の真ん中に設計したのか。

校舎のデザインを考えたときに、まず最初に考えたことは、「たっぷりあそべる豊かな森があること」、「校舎の真ん中に、学びに自由に使える大きな空間があること」です。

学園の環境は、子どもの育ちや学びをどう考えているかのメッセージであるとぼくは考えています。

日本の学校建築の多くは、同じ形の教室が廊下に沿って一直線に並んでいる形式です。一般的な学校建築の形式は、他と区切られた空間の中で、1人の教師によってクラスのメンバー全員に講義中心の一斉授業をして、教師が主導しますよ、というメッセージを発しています。

軽井沢風越学園では、自己主導・協同・探究の学びの実現を目指しています。そうした学びを支える空間とはどのようなものか。分けられた教室中心の校舎から、流動的に人が行き交い、異年齢が混ざり合いながら、自分の学びやすい場所で学べる空間が必要なのではないかと考えました。

実はこうした開かれた空間を学校の中につくることは新しい試みではなく、これまでにもありました。全国的には1970年代からオープンプランスクールをはじめ「子どもたちの学びやすさ」に焦点を当てた大きなオープンスペースを持った学校建築も増えました。たとえば1980年代、愛知県の緒川小学校の校舎と実践が有名でした。オープンプランスクールが増えていく時期に僕も見学に行き、これからの教育が変わっていくとわくわくしました。しかし、正直にいえば、現状は多くの学校では、このオープンスペースが活用されていません。

一昨年、ある有名なオープンプランスクールの校舎の学校を見に行ったところ、教師の講義中心の一斉授業しか行われていず、オープンスペースには子どもたちはだれもいませんでした。先進的な学校建築も、当事者にとって「与えられた環境」になってしまうと、十分に機能せず形骸化してしまう。学校建築を変えたからといって直ちに教室の学びに変化が起きるわけではないと先達から学びました。つまり「見栄えの良さ」だけではなく、その空間を「どう使うか」が重要なのです。そのために必要なことはなにか。

一つは大人の「学びや学校への考え方」や「子どもをどういう存在と見るか」でしょう。しかしそれだけでは心構えの問題になってしまいます。ソフトだけではなく、ハード面でオープンスペースにするだけではない工夫があるのではないかとも考えたのです。どうすればよいか。

その時に浮かんだのがライブラリーでした。言い換えると、「本物、学びの刺激になるものがすぐ手の届くところにある空間」、です。

それには個人的な体験も多分に含まれます。ぼくにとってはライブラリーはそういう空間の一つでした。高校時代、2年生まで全く勉強しなかったぼくは、高3になって受験という現実が目の前に迫ったときに、端的に「やばい」と思いました。450人中438番というような状態でしたから…。そこで高3になってから、朝高校で出席を取ると、県立図書館に行って夜の9時まで勉強していました。同じテーブルに座っている人に適度に刺激を受けながら、飽きると、本棚を眺めて、気になった本を読んだり、近くの林を散歩したり。夕方になると学校から帰ってきた友達がやってきて、ゆるゆるとつながりながら学ぶ1年間は、ぼくにとってのライブラリーの原体験の一つです。自分で場所を選べる。ゆるやかにつながれる。知的な刺激がある。ちなみに、それでルポタージュにはまって読みまくり、結果小論文が得意になるという。笑

刺激がすぐそばにある。こんな場所を教室にもつくりたいと思い、教員になってからは、教室に図書コーナーを常設するようになりました。

 

手が届くところに本があること。日常的に本が見えていること。これは、想像以上のちからを発揮しました。子どもたち、めちゃめちゃ本読むようになるんですよね。また他の人が読んでいる本も気になる。読んだことについての交流がうまれる。やがて、そのコーナーで勉強する子どもも出てきました。「本が日常の中にあることで起きる豊かな学び」というのがぼくの実践上の核になっています。

軽井沢風越学園で手の届くところにある刺激は、本に限りません。森の中の自然、道具、異年齢の子どもや多様な大人。流動的に人が行き交い、混ざり合いながら学べる大きな空間に、本、道具、素材など様々な刺激がすぐそばにあり、思いついたときに活動が始められること。これが、ぼくが今回の学校づくりで考えていた根っこの発想です。

具体的な言葉では、「ライブラリー」と「モノライブラリー」ということばで設計の打ち合わせをスタートしました。「モノライブラリー」が、ラボスペースとして位置付けられています。

校舎を入るだけでワクワクする空間にしたい。子どもや保護者と一緒に「つくる余地」を残したい。家具の配置や本の排架ってどうすればよいだろう?地域に開かれたライブラリーってどんなふうに実現できる?初めてのチャレンジなのでわからないところだらけですが、きっとおもしろいことになるのではないかと確信していきます。学校づくりとあわせて、ライブラリーづくりもたくさんの人たちの力を借りて進めていきたいです。

岩瀬 直樹

投稿者岩瀬 直樹

投稿者岩瀬 直樹

幸せな子ども時代を過ごせる新しい学校を創ります。私は公教育の可能性を信じています。子どもが持つ学ぶ力を信じています。教員の力を信じています。それらが最大限発揮される学校とはどのような形でしょうか。これまで学級で実践してきたことを出発点に、子どもも大人も「こんな学校に通いたい」「こんな学校を増やしたい!」とワクワクする学校を、一から創っていきます。

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