こらぼジャーナル 2019年7月11日

こらぼジャーナル(9)「こうのすけのサイコロ」〜探究のコントローラーは子どもがもっている〜

甲斐崎 博史
投稿者 | 甲斐崎 博史

2019年7月11日

こうのすけは3年生、「探究の算数」のプロジェクトに参加していました。第1期には、「風越こらぼの会場の玄関に、傘立てを作ってみんなに使ってもらいたい」という目標を決めて、傘立て作りに取り組みました。「作家の時間」にも意欲的で、とても構成のしっかりした長編の作品をいくつも書き上げました。

傘立て作りの様子。最後のほうでは仲間と協同する姿も見られました。

ある日の「探究の算数」で、全員で「一枚の紙から箱を作る」ということをやったのですが、ここでの出来事が彼の探究の入口になりました。

この時、こうのすけは最初、箱(立方体)を作れませんでした。こうのすけは3年生、まだ学校では立方体も、その展開図も習っていません。決められた履修時期前だと子どもたちには学ぶことができないのでしょうか。いや、そうではなく、ゆりな(2年生)たいよう(1年生)の算数探究でもそうでしたが、触れる機会があれば(さらになんらかのモチベーションがあれば)子どもたちは自分自身の力で学んでいけるはずです。このことをこうのすけの探究でも確信することができました。

こうのすけは、まわりの子たち(そこにはゆりなもたいようもいたし、5年生の子もいました)の様子を見ながら立方体の展開図を書き上げ、自分の力(ここでいう力は解決するために、自分でなんとかしたということ、真似でもいい)で立方体を作りました。自然な形で異年齢の協同的な学びが起き、「知らない」「できない」ということがネガティブにとらえられず、前向きに学び進めることができるのが風越こらぼのいいところです。

こうのすけが書いた展開図。のりしろまでついている。
大きさや形など、試行錯誤の様子が見て取れる。

仲間の様子を見ながら一緒に作り上げていきました。

ここからさらに、複合立体の展開図(立方体の上に小さな立方体が乗っている立体を一枚の展開図で作る)の課題へと進むのですが、こうのすけは、できあがった立方体を「サイコロができた!」と大喜び!すでに彼の心は与えられた課題にはありませんでした。そしてこうのすけの探究は「もっと大きなサイコロを作りたい!」ということにロックオンします。

彼は工作用紙をねだり、立方体の一辺の長さを1cmずつ大きくして、次々とサイコロを作っていきます。その日のうちに作り上げたサイコロは下の写真の5つです。「はまる」ということはこういうことですね。

一辺1cmから5cmまでのサイコロです。

最後に、紙(30×40の方眼工作用紙の半分サイズ)が小さすぎてもうこれ以上大きなサイコロはできないと訴えてきます。確かに、渡された紙では1辺6cm以上の立方体はできません。悔しい思いをした彼は、親に「工作用紙を買って!」とねだっていました。(買ってもらったらしい)

後日、「できた?」と聞くと、「やってない」と言うので、今度は30×40の大きなままの工作用紙を渡し、チャレンジを促しました。そして、1辺10㎝の面をもつ立方体まで完成させます。(この紙ではこれが限度)さらには、もっと小さいのもできるはず!ということで、1辺0.5cmのサイコロも作り上げます。
その一群がこの写真です。

一番手前が一辺0.5cmのサイコロ。一番向こうが一辺10cm。

さて、これ、ゆりなの時と一緒です。こうのすけは立方体や展開図という言葉を知ることはなく、立方体やその展開図を体験の中で理解しました。そして、一番大事なのは、彼にとってはそれを理解することが目的ではなかったということなんです。彼の目的は、「大きいサイコロを作る」なんです。ゆりなが「積み木を再現する」というのが目的だったように。

話は第2段階へとまだまだ続きます。彼のこの探究がとてもおもしろかったので、私は彼の作ったサイコロを使って、あることをレクチャーすることを考えました。きっかけは彼の書いた探究ノートです。

(画像をクリックすると拡大します)

シンプルな、挫折感漂う振り返りですが、何か訴えるものがあります(笑)。探究ノートの中のコメントにも書いてありますが、大きな紙が必要になるにしたがい、大きいサイコロにはいったいいくつのマスがあるんだろうという問いを入口にして、(工作用紙を使ったので、1マスは1辺1cmの正方形になります)そこからさらに、「1辺が1cmずつ大きくなるサイコロのマスの数には何か決まりがあるのではないか」という問いを子どもたちに考えてもらおうと思いました。「算数のめがね」(こらぼジャーナルno’7「お菓子の家を作りたい!」参照)の中に、「きまりを見つける」というものがあります。それをレクチャーできるかなと思ったのです。下の写真はその時に使ったホワイトボードです。

最初は空欄で提示、レッスン中にこうのすけが書き込んでくれました。

しかし、ここでもおもしろいことが起きます。そこにいた子どもたちは、一生懸命きまりを見つけようとして、数量の変化に注目します(下の「倍」というところ)が、こうのすけの注目ポイントはそこではなかったのです。彼の注目ポイントはマスの数の多さです。計算していくとどんどん増えていくマスの数に驚きを隠せないでいます。8cmになったところで384マスとなり興奮MAXです。その時はまだ1辺7cmのサイコロまでしか作っていなかったので、さっそく1辺10cmのサイコロまで作り上げました。

さて、彼のサイコロ探究のフィナーレは次のような形になりました。

風越こらぼの第2期の報告会は、自分の探究の成果を保護者の前で発表するという形式でした。こうのすけはそこで、このサイコロの探究のことを動画に録って発表することにしたのです。発表準備の時間に、こうのすけは私に、あのときのホワイトボードの表にどういう項目があったのかを質問に来ました。私はその日は彼とは別のプロジェクトでしたので、その項目だけを伝え、あとは彼に任せました。彼は自分で新たに表を書き、発表用の動画を撮ったのです。下の写真がそのときのホワイトボードです。ね、問いが、「サイコロのますの数は何ます?」です。項目も、私のミニレッスンの時とはちょっと違います。自分で考えたんですね。

発表用のホワイトボードの前でパチリ。

その時の発表用動画を紹介します。こうのすけが、自分の探究の学びに自信をもっているのがとてもよく伝わってくる動画です。

 

探究の入口はどこにあるかわかりません。そして、ファシリテーターの意図するものとは違う方向に子どもたちは「はまる」ことがあります。でもそれは、その子自身が本来もっている学びの方向なんだと思います。それを無理に変える必要はありません。複合立体の展開図に行かずより大きなサイコロへ、マスの数のきまりに行かずマスの数の多さに。今回のこうのすけの探究は、私の思惑とはまったく違った方向に進みましたが、こんなにも深く豊かで学び多きものになったのです。そして、そのときにはすでに、彼は私の手を離れ、自らが学びのコントローラーをもった探究者となっていたのです。

甲斐崎 博史

投稿者甲斐崎 博史

投稿者甲斐崎 博史

体験学習法をベースにしたアドベンチャー教育を、学校教育の中に取り入れることを長年実践してきました。軽井沢風越学園では、教育も人生も丸ごとアドベンチャーを楽しみたいと思います。

詳しいプロフィールをみる