こらぼジャーナル 2019年6月5日

こらぼジャーナル(8)「裏・お菓子の家を作りたい!!」〜協同から生まれるもの〜

甲斐崎 博史
投稿者 | 甲斐崎 博史

2019年6月5日

こらぼジャーナル(7)はお楽しみいただけましたでしょうか。「〜したい」から生まれる探究ってパワーありますよね。

さて、今回のこらぼジャーナルは、協同探究である「お菓子の家を作りたい!!」の裏側で起こっていたある部分に焦点を当てたいと思います。当初は同じ文章の中に書いていたのですが、あまりにも焦点が違いすぎて、あっち行ったりこっち行ったりで書くのが大変で、こりゃあ、たぶん読むのも大変だろうなぁと思い、「裏・お菓子の家を作りたい!!」という形でまとめることにしました。

探究のメインの活動であるお菓子の家作りについては、前回のこらぼジャーナルを参照してください。ここでは、別視点での子どもたちの様子やふり返りなどをご紹介します。

ではでは、お菓子の家作りの第2幕のはじまりはじまり〜(^ ^)

1月15日(火)「どうやったらおかしの家を作れるのか?」

この日、「お菓子の家を作りたい!!」という探究テーマが決まり、最初に各自ミニホワイトボードに見取り図を書いていったのですが、実はこのときおもしろいことがいきなり起きていました。ホワイトボードに書いた見取り図ですが、実は3人とも同じような図になったのです。どうしてそうなったかというと、各々が自分の理想とする見取り図を描いていくのではなく、3人で合意をとりながら書いていくという感じだったからなのです。ですから、できあがった見取り図は、どれも同じようなものになっていました。一人一人のやりたいことが大切にされてないじゃないかと思うかもしれませんが、この日の3人のふり返り(全員同じでした)を読むと、どんなことがこのときにあったのか、それを彼女たちはどう感じていたのかがわかります。

「3人で図に書きながら話していたら、新しいアイディアがどんどんうかんで、いい事だけ、しぜんときまっていった。思いついた事は、どんどんいったら、その事について話し合えるから、なんでもいおうと思った。」

どうでしょう? おもしろいですね。話し合い活動の学習ではよく、「まずは個人の意見をしっかりもってから話し合いに参加しましょう」と言いますね。うん、それは確かに大事。でも、少人数で、互いに聞き合える安心できる関係性があるならば、3人でぺちゃくちゃとおしゃべりしながら、意見をすり合わせていくほうが、一人一人の意見が大切にされていくんじゃないでしょうか。前述の方法だと、3人それぞれが考えた3つの案の中から1つを選ぶという形に最終的にはなりそうです。「いい事だけ自然と決まっていった」というプロセスは、一人一人の思いを大切にしながら3人の合意がしっかりと取れている証拠です。

このように、彼女たちは協同する中で、話し合い方や物事の決め方はどのようにすればいいのか、一人一人を大切にするってどういうことなのか気づいていきました。これらはお菓子の家の作り方とはまったく無縁です。ましてや算数などとは。でも、協同の学びでは、このようなことがたくさん起こります。うまくいかないこともね。

1月22日(火)「ビスケットを紙にくっつけるには…」

この日は、製作開始1日めでしたが、失敗続きの散々な日でした。やり方はよくわからない、道具はそろってない、役割もあいまい…できたのは2回やり直してやっと作った壁がたったの1枚だけ…。

せっかくできた壁を冷蔵庫に入れるときひっくり返してしまった…

この「うまくいかなかった」という体験は、1人で乗り越えるのはなかなかしんどいときがあります。でも気の合う仲間と一緒だと、互いにエンパワメントし合い、再チャレンジする力を得ることができます。失敗をネガティブにとらえるのではなく、チャンスととらえ、うまくいく方法をみんなで考えて次の活動に生かしていくことが容易にできます。

その証拠に、3人ともふり返りでは、「この失敗を次に生かす!」と張り切っている様子が見て取れました。しかし、この失敗を次にどのようにして生かすかは、2人と1人では実はまったく違っていたのです。

1月29日(火)「やねのボコボコはどうやってなくす?」

前回の失敗を生かして、準備や作り方に格段の進歩が見られました。作業はとてもスムーズに進み、着々とお菓子の家の部品が完成していきました。

ここで前回のこらぼジャーナルを読み返してほしいのですが、1月29日のふり返りには、まりの分だけないことに気づきましたでしょうか。実はまりは、ほかの2人がやり方や材料に注目しているのとはちょっと違ったふり返りをしていたのです。それが以下の文です。

「この前はぐちゃぐちゃできたなくなってしまったけど、今回はきれいにぐちゃぐちゃにならないようにできました。それも、この前はまだ、きまりやパターンがなかなか見つけられなくて、時間がかかっていたけど、だんだんきまりやパターンを見つけられたからだと思います。次もこのようにしたいと思いました。」(まり)

実は、前回初めての実習だったこともあり、台所は常にぐちゃぐちゃで、終わったときには上の冷蔵庫の写真のような、爆撃でもあった後のような有様だったのです。道具もなくやり方もいい加減でしたので、作業も滞りがちでした。今回は、事前に道具をそろえ、手順をしっかりと3人で話し合って決めてから作業スタート。さらには作業をしながら片付けも同時進行で行い、テーブルも常にきれいに整えられて、気持ちよく作業することができていました。

まりの整理した作業台。常に気持ちよく作業ができるように気を配っていました。

「算数のめがね」(前回の文尾参照)の「きまりやパターンを見つける」というのは、算数的な意味で提示したものだったのですが、まりはそれを、作業のプロセスの中に見出そうとしました。課題達成するためには、料理のやり方や材料の質を上げることばかりに目を奪われてしまうけど、いやいやそれだけではなくて、作業のプロセスにきまりやパターンを見つけると、時間がかからず手際よく課題達成できるんだよと、小学3年生に教えられてしまいました。コンテンツの質の向上と同時に、プロセスの精度の向上も大事ということですね。

2月5日(火)①「おかしの家のそれぞれのかべをくっつけるには?」、②「おかしの家をかんせいさせるには?」

「やくわりをきめて、それをみんな自分のやくわりをきちんとやっていたからはやくすすめられた。またつづけていきたい。早く来て時間があったらクッキーを作る。」(まり)

彼女の関心は、いかにしてお菓子の家を作るかにではなく、いかにしてお菓子の家を作る場をつくるかにあるんですね。動画を見てみると、彼女の動きはとても特徴的です。家作りをしている作業のそばで常に場の状況を気にしています。そして、気になったらすぐ動く。それがわかるのが以下の動画です。彼女の様子をよく見ていてください。1分10秒くらいからです。

たぶん他の子だったら、そんな小さなことに気づきもしないでしょう。気づいたとしてもそれを拾ってゴミ箱に捨てるなんていう行動はとらないでしょう。何気なく伸ばした手の先の、ほんの小さな気づきなんですが、まりにとってはとても大事なことなんですね。

次の動画は、二等辺三角形を3人であーだこーだと考えながら作っていたときの中の1つです。前回もアップしましたが、今回はまりの動きに注目してご覧ください。役割として決められた動きではなく、彼女は自分の関心で動いています。家作りと場づくりを行ったり来たりしながら活動に参加しています。

まりはふり返りの中で、役割を決めていたと書いていますが、じゃあ、こよりとみうの2人は整理や片付けをしていないかというと、そうでもないんです。ちゃんと2人も片付けながら作業をしています。逆にまりはお菓子の家を作っていないのかというと、そういうわけでもありません。前回のジャーナルも含めて、他の動画を見ていただければわかると思います。ただ、比重が違います。作業をどんどん進めるパフォーマンス機能の部分と、作業しやすい場を整えるメンテナンス機能の部分がとてもバランスよくとれているチームです。その2つの機能が、完全に役割として分断されておらず、ゆるやかに無理なく個々人の強みや関心によって発揮されています。

2月12日(火)「どうやったらおかしの家をかんせいさせられるのか?」

この日は風越こらぼ最終日、今日中に完成させなければなりません。でもこよりがインフルエンザでお休みしたので、まりとみうの2人で一所懸命に家を組み立てます。こよりがいなくてもパフォーマンスは落ちません。それはこれまで完全に役割を分断して行なっていなかったからです。全体の進行は3人とも理解して、それぞれ自分の得意な役割を果たしていたのだと思います。2人になっても、こよりの役割の分もしっかりとフォローしながら慌てず粛々と作業を進めていきます。2人でも場はとてもきれいです。そして無事お菓子の家は完成しました。2人もとても満足げでした。

協同して探究することは難しいところもあります。でも、1人ではできないことを可能にします。自分の足りないところを他のメンバーがフォローしてくれる、「助けて!」というとすぐに駆けつけて一緒にやってくれる、1人で悩んでいると一緒になってウンウン考えてくれる、失敗しても励ましてくれる…。そして、今度は自分が誰かのフォロワーになる。互いに自分の強みを生かしながら貢献し合う関係性の中で、子どもたちの学びは深まりをもっていきます。

軽井沢風越学園がカリキュラムの3つの軸のひとつに「協同」を据えているのは、こうした学びの可能性を感じているからなのです。

甲斐崎 博史

投稿者甲斐崎 博史

投稿者甲斐崎 博史

体験学習法をベースにしたアドベンチャー教育を、学校教育の中に取り入れることを長年実践してきました。軽井沢風越学園では、教育も人生も丸ごとアドベンチャーを楽しみたいと思います。

詳しいプロフィールをみる