こらぼジャーナル 2019年4月13日

こらぼジャーナル(6)ことみの紙飛行機 〜あそびながらチャレンジし続けること〜

甲斐崎 博史
投稿者 | 甲斐崎 博史

2019年4月13日

1年生のことみの第1期の残り1ヶ月間の目標は、「かみひこーきを60こつくる。いろは、きいろ、あお、みどり、むらさき。かみひこーきをいっぱいつくってうる」というものでした。そこで私のほうから「よく飛ばないと売れないよね」ということを伝えると、ちょっと考えて、ただ作るだけではなくて、よく飛ぶ紙飛行機を作るという目標になりました。あそびが探究に変わった瞬間だと私は思いました。

紙飛行機は、探究の素材にとても向いています。明確な目標があります。「よく飛ぶこと」です。とってもわかりやすいですね。検証もしやすいです。工作自体がとても簡単です。1年生でも十分にいろいろな工夫ができます。そして、航空力学の初歩を学べます。(ほんとか?)とても科学的な課題です。それを楽しみながらできます。

作り始めてから2日めまでの様子をまずは詳しく紹介します。ここまでで計8機作りました。その8機ですが、1機たりとも同じものがありません。彼女なりに毎回あーでもない、こーでもないと工夫をしています。

1号機は折り紙で作りました。折り終わると私に見せにきてくれました。飛ばしてみると、ちょっとバランスは悪いようですが、けっこう飛びます。しかし私はその紙飛行機を見て、ことみは基本的な紙飛行機の折り方を知らないんだなということに気づきました。

2号機は、私が、「本番!その1号機をケント紙で折ってみよう!!」と言って渡しました。しかし、ケント紙は長方形、最初に折った折り紙は正方形です。しかもかなり硬い! ちょっと失敗をしました。1号機とはまったく違う折り方になってしまい、しかもまったく飛びません。あまりにもひどいつくりだったので、私が「お手本見せるよ!」と言って、折り直してみました。(画像は私が折り直したものです)しかし、これにはまったく興味を示さず…。あー、またしても同じ間違いを犯してしまいました。以前ことみが磁石に興味をもった時も、ちょっと無理やりに実験に誘導すると、一気に興味を失ってしまったことがあったのです。ことみは教えたり、大人の考える「学び」に誘導するとすぐに興味を失ってしまいます。自分でとことんやりたい子なのです。

3号機はまたまたケント紙。これはほんとに硬すぎますね。苦労していました。これも飛ばず、1日めはこれにて終了です。

2日めは4号機からスタートです。紙をケント紙とコピー用紙から選んでもらうと、彼女はコピー用紙を選びました。3号機の反省を生かし、羽に工夫を加えます。これは飛ぶというより投げられた感じ(笑)

5号機。さらに羽に工夫を加えます。だんだんかっこよくなってきました。しかし、なかなかフワリとは飛びません。

6号機。5号機までこだわった形を捨てます。この思い切りがいいですね。まったく違うスタイルです。そして彼女は、この6号機を折っている最中にあることに気付きます。それは、右と左の形が違うということ。実は彼女、5号機までは中心線を折ってから左右の羽の部分を折ってはいませんでした。適当に左右から紙を折りはじめ、それをだいたい真ん中あたりで合わせるという折り方をしていました。ですから、できあがった機体はすべて左右対称ではありません。みなさん、5号機までの機体をよく見直してみてください。左右の羽の形が対称でないのがわかるはずです。

6号機を途中まで折っていたところで、左右が合わないことに気付いていたので,「中心線を折ってから、そこに合わせて折るといいよ」とアドバイスします。このアドバイスはよく聞いてくれました。ホッ。そこから彼女は、中心線に合わせて左右の羽を折り、左右対称の飛行機の第1号を作り上げました。しかし、この機体は飛びませんでした。笑。

7号機、中心線をしっかりと折ってから、機首をとがらせずに折りはじめました。これも新しいパターン。しかし、胴体の部分が貧弱で、剛性が弱いので羽を安定させることができません。飛ぶというより、ひらひら舞う感じ。ですので、この7号機には、「ひらひらごー」という名前がつけられました。楽しんでいます。

8号機、今回は、胴体部分が以前と違います。8号機は、はじめて、胴体部分を2回内側に折り返して厚くしています。あと、これまでは、1号機以外、半分の半分という形で折ってきて羽をつくっていたのですが、そうやると2回内側に折り返している分、羽が小さくなってしまいます。考えた末に、今回は胴体部分を細くして、羽を大きく張り出させる折り方に挑戦します。結果的に、胴体の剛性が増し、機体が安定します。バランスもよく、とてもよく飛びました。かなり満足げです。というところで、2日めは時間切れです。

ここまでの様子を見てみると、ことみは何か仮説をたてて、折っているということはありませんでした。でも、折りながら彼女はいろいろなことに気付いていきます。しかし、気付いたことを次の機体に生かしているかというとそうでもありません。けっこう感覚的に折っている感じなんです。さらには、飛ばない紙飛行機ができてもそんなに気にせずに、そして、その失敗を生かすこともあまり考えず、次の新しいことにチャレンジしていきます。

その後もことみの探究は続きます。こらぼに来てはひたすら紙飛行機を折る日々。私も一緒に楽しんでいました。20号機を過ぎたあたりで少しマンネリ化して、アイディアも出てこなくなったようなので、私がちょっと変わった紙飛行機を作って見せてあげました。

「つばめ飛行機」ってやつですね。しかもよく飛ぶんです。折り方もちょっと変わっていて、何か刺激になればいいかなーと思ったんですが、ことみはこの紙飛行機の作り方の、ある特徴に注目しました。これはちょっとうれしい想定外のことでした。それは、このつばめ飛行機、羽の部分を作るときに紙を「切る」んです。この「切る」という工程が、新しいアイディアを生み出していきます。

さっそくちょきちょき切り始めます。けっこう大胆に。

完成した22号機です。胴より翼が長い扁平のデルタ翼機です。おー、画期的!と思いましたが、ぜんぜん飛びません。いくつか似たようなデルタ翼機を作りましたが、どうやっても飛びません。

 

 

しかし、彼女はこんなことぐらいではめげないのです。それからも様々な工夫を加えながら折ったり切ったりし続けていきます。その中からいくつか紹介します。

一番多い先鋭デルタ翼機タイプ

不思議な折り方

なぜレンタルなのかは謎…

つばめ飛行機改

どう見ても飛びそうにはない…けどやってみる!

超ミニミニ飛行機

 

そしてついにその日はやってきます。途中で目標を下方修正して、60機から50機にしましたが、最後までやり遂げました。

この探究で何か気づいたことがあるのか、いくつか質問をしてみました。

 

私「一番飛ぶのはどーれだ?」

こ「なんだっけ、なんだっけ、待てよ…47と9と11……だけ!」

私「だけ?(笑)」「なんか似てるな、やっぱ」

私「飛ぶのと飛ばないのの違いは何?」

こ「たぶんある。たぶん、たぶん」

私「どういう違い?」

こ「飛ぶのと飛ばないの? 知らない」

私「どれが飛ばない?」

こ「忘れた。あ、でも、くるくるするやつもあるよ」

私「ひらひらするのもあったよね、あ、あとはねるのも」

こ「はねる?」

私「うん、はねる。はねごーっていうのなかったっけ」

こ「はねごー? あー、はねごーあった!はねごー!! これ、どうなるんだっけ?」

この後、はねごーを飛ばして、これ以上やっても意味ないかなと思いふり返り終了!!早っ!

まあ、こんなもんでしょう(笑)ここで無理にまとめちゃいけないなぁと思います。よく飛ぶ紙飛行機を作る探究を通して、飛ぶ紙飛行機と飛ばない紙飛行機の構造に着目し、なぜ飛行機は飛ぶのかについて解明する、必要は今はなくて、まずは思いっきりあそぶこと、楽しむことなんじゃないかなと思います。このジャーナルの文章の最初を読み直してください。(この最初の文章を読んだとき、「確かに!」と思った人、ちょっとアブナイです)私の浅はかな思いが書いてあります。「よく飛ぶ紙飛行機を作る」に目標を誘導修正して、探究になったと喜んでいる私、これを素材にして、ことみにいろんなことを学ばせようと目論んでいる私、最初の何機かになんとか意味付けをしようとしている私…。でも、ことみはまったくそんなことは考えもせず、ただひたすらに紙飛行機作りに没頭し、作ること、飛ばすことを楽しんでいました。毎回折り方を変えて紙飛行機を作っていたのは、彼女なりの「あそび」だったんでしょう。「あそびごころ」と言ってもいいですね。

次にアップしてある動画は、最初のものが、私が必死になんとか学びに結びつけようと、繰り返し「なんで飛ばないと思う?」と質問するのを、軽くスルーすることみの様子です。今見返してみても、非常に心が痛いです。笑。次の3本が、私に邪魔されず、黙々と折り続け、それを飛ばしている動画です。

ほんとに楽しそうですよね。紙飛行機はあんまり飛ばないんですよ。でもとっても楽しそうです。偶然にもよく飛ぶ紙飛行機ができた時はさらに興奮MAXですが。(笑)

もし、このことみの紙飛行機作りを構成的に進めたとしたら、たぶん50機めの飛行機は、めっちゃよく飛ぶ紙飛行機ができているはずです。でも、ことみの気持ちはどうでしょうか。はたして心から飛行機作りを楽しめたでしょうか。そして、もっと作りたい、家でも作りたい、友だちに教えたいと言うかどうか、私はたぶん、そういうことはないのではないかと思います。(すべての子どもにあてはまることではありません)

ちなみに、もうひとつの目標の「売る」ですが、さすがに金銭が絡むのはいかがなものかという大人の事情で、ことみと相談の末、こらぼの仲間たちにくじを引いてもらって配ることにしました。よく飛ぶのは3機しかないので、当たりはかなり高確率のくじです。案の定、「飛ばなーい!」「なにこれー」の連続でしたが、みんなとっても楽しそう。作ったことみはもっと楽しそう。そのうちくじなど関係なく紙飛行機飛ばし大会になり、やっぱりこれはとっても楽しい「あそび」なんだなと思った次第です。逆に、これがあそびだったからこそ、ことみは思いっきりチャレンジできたのではないかとも思うのです。

甲斐崎 博史

投稿者甲斐崎 博史

投稿者甲斐崎 博史

体験学習法をベースにしたアドベンチャー教育を、学校教育の中に取り入れることを長年実践してきました。軽井沢風越学園では、教育も人生も丸ごとアドベンチャーを楽しみたいと思います。

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