いろいろな人が行き交う学校

4月に子どもたちと一緒に学校の畑の開墾をしてくれた近所に住む龍二さん。雑草が生い茂っているその畑を見ながら腕組みしている。教職員のよし先生がその姿を見つけて声をかける。

「龍二さん、おはようございます。どうですか?畑の様子。」
「どうですかって、どうすんのこれ。こんなんじゃ育つもんも育たんよ。」
「そうですよねー、草取りしないとですよね、そろそろ。やっぱり声かけないとダメかなぁ。僕らから声かけるより、龍二さんから声かけてもらったほうがいいかもしれません。」
「じゃあ、昼飯の時間にちょっと顔出すよ。」
「やっぱり、もっとみんなが毎日通るところに畑つくらないとダメですかねぇ?」
「畑を引っ越すってことか?どうかなぁ。」
「来週の学校ミーティングで取り扱ってみようかな。龍二さんも参加できますか?」
「木曜日の5時間目だっけ?行けるようにするよ。」

種蒔きと収穫は子どもたちにも人気の作業だが、その途中の雑草取りをすすんでやる子は少ない。結果的に畑は雑草だらけになるのだが、どこまで大人が手を出すかは判断が難しい。以前、雑草取りを丁寧にしてくれていた龍二さんに「子どもたちが雑草取りの必要性に気がつくまで放っておいてみましょう。」と学校から提案したものの、結果的に畑は雑草だらけになってしまった。子どもたちが「自分たちのつくった野菜で給食を!」と理想を掲げたものの、なかなか実際に軌道に乗るまでは時間がかかりそうだ。

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午前中たっぷり森で遊んだ幼児たち。お昼ご飯を食べ終えて、まだ途中の秘密基地づくりにすぐ戻る5歳・4歳児たち。何人かの3歳児もそれに遅れて追いかけていく。理科室前のデッキで中学生のペットボトルロケットづくりを真剣に見ている子たちもいる。ハサミを使って工作をする子、地面に大きな紙を広げ、手にいっぱい墨汁をつけて絵を描いている子…。広い敷地、広い建物でそれぞれの遊びをたっぷりしている子どもたち。2歳児の中には眠くなっている子も数人。こうなってくると教職員だけではちょっと手が足りなくなってくる。

学校からすぐ近くのところに「看護小規模多機能型居宅介護事業所 たすき」がオープンしたのは、開校から1年過ぎた頃のこと。たすきでお昼ご飯を食べ終え、トキさんと初音さんが、日課である学校の中の散歩をしている。「あ、トキさん。これ読んでー」と2歳児の和弘と瑞希が二人に駆け寄る。絵本を受け取り、ソファーに腰掛けるトキさんと初音さん。和弘はトキさんの膝の上へ、瑞希は初音さんの背中へ。トキさんの読み聞かせのやわらかな声とリズムが、2人はとても気に入っているようだ。トキさんにとっても、普段はなかなか会えない孫の小さい頃を思い出せて「たすき」に帰ってからもご機嫌なんだと、初音さんが教えてくれた。しっかり身体をゆだね、いつのまにかすやすやと眠ってしまった和弘と瑞希を保育スタッフのゆうさんに託し、トキさんと初音さんは散歩の続きをはじめた。たすきの利用者の方と、子どもたちの関わりもこんなふうに少しずつ増えてきている。

「トキさん、初音さん、たすきに後から寄りますね。薬のこと、ちょっと相談しましょうね。」 そう2人に声をかけて、慌てた様子で玄関を出ていったのは学校医の黒谷さん。黒谷さんは、学校のすぐ前にオープンした在宅医療専門の「森の家クリニック」の医師だ。心臓の動きについて興味を持った中学生の光之介に心臓模型を貸し出すのに、お昼休みの時間を使って学校に立ち寄ってくれた。すぐに帰るつもりだったのが、大喜びの光之介の姿に触発されて、灯油ポンプを使った心臓模型のつくり方を説明しているうちに、あっという間にクリニックに戻らなければいけない時間になっていたのだった。日本で一番学校にいる時間が長い校医は、きっと黒谷さんに違いない。

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こうして毎日いろいろな人が学校の中で行き交う。その豊かな関わりの中で、子どもたちは育ち、学校も育っていく。

(2017年9月15日版)


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