2017年をふりかえって

2017年12月20日夜、発起人の本城、岩瀬、苫野の3人が一年をふりかえるやりとりをしました。軽井沢、埼玉、熊本と離れた場所から学校づくりに取り組む3人。この日もWeb会議システムを使い、冒頭には苫野家の子どもたちが画面に登場、和やかなスタートとなりました。

変わること・変えることを恐れない

Q:2017年をふりかえって、これからの軽井沢風越学園にとって大事な場面・経験だったと思うことと、その理由を教えてください。

岩瀬:僕にとっては、4月中旬の軽井沢での地域説明会が大事な場面だったな。実際に学校に来るかもしれない保護者や子どもの姿を見た時に、本当に始まるんだなという責任感や現実感が湧いてきた。2日続けて開催したことで、合間にスタッフとゆっくり話ができたこともよかったよね。印象的なのは、前日に説明会のプログラムを考えてる時に、「情景を参加者の皆さんと一緒に読んだらどうだろう」ってアイデアをぽろっと言ったら、いいねって返ってきて、あっという間に資料の準備が始まったこと。新しいことがパッと取り入れられて、既に決まっていたことから変わることも大事にされる。何かをやめたり変えたりすることを、その場ですぐに判断できるっていいな、と実感できた。地域の人と初めて会うときにそういう判断ができて、しかもそれがやってよかったと思うことだったから、印象的。これからもいいと思ったことは、まず変えてみたい。もう一つは、サマースクール。スタッフ間でうまくいかないことや、ぎくしゃくすることがたくさん経験できて、リアルでこういうことをたくさんやらなきゃだめだなって感じた。現場でうまくいかなさとか、お互いの違いをぶつけ合うシーンを開校までにたくさん積み重ねたいなと思ってる。

 

苫野:僕もまったく一緒ですね。地域の説明会で1番よかったのは、受け容れられ感です。ちゃんと地域の人たちに楽しみにしてもらっていて、地域に根ざした地域とともにある学校になりそうだ、と実感できたのが、僕にとっては嬉しかった。

サマースクールも、こんなスタッフたちとこんな風に子どもたちと関わっていくんだなというイメージが湧きました。うまくいかない感じもあったけれど、とはいえなんだかんだで大丈夫、このチームなら信頼しあってやっていけるな、という気持ちが、僕の中にやってきたのはよかったですね。

 

本城:やっぱりその2つは、そうなんだよなぁ。それ以外だと、2月1日にプレスリリースがちゃんとできたこと。軽井沢町の人にも伝わったことで、地域での説明会にたくさんの人が参加してくれたし、採用がどうなるかなという不安があったんだけど、結果的に150人くらいの応募があって。

さっきごりさん(岩瀬)が変えることについて言ってたけど、採用のやり方も途中で変えたんだよね。採用合宿をすることにしたのもそうだし、合宿の内容も4回とも違う。どれも変えてよかった。「軽井沢風越学園は港みたいな存在」という言葉が生まれたのは、合宿をやったからこそ。合宿がなかったら、応募してくれた人たちと出会えた感じがなかったと思う。採用のプロセスで授業を見学させてもらうと、僕らが目指しているものがなんなのかを考えることもできたことも貴重な機会だった。あとは説明会やサマースクールや、採用合宿を通じてスタッフと寝泊まりして一緒に過ごす時間がたくさんあったのも大きかったかな。それにしてもプレスリリースって、ずいぶん前のような気がするけど、まだ1年経ってないんだね。

 

岩瀬:はるか昔の感じがするなぁ。採用合宿はほんとやってよかったし、参加者からもらった、すごく大事にされている感じがしたという感想は嬉しかった。これからも、そうありたいな。

 

今のところ3人でやることにストレスがない…!?

Q:この1年、お互いに発見した新しい側面や再確認したことは何かありますか?

苫野:本城さんと初めて会ったのがまだ1年ちょっと前なんですよね。本城さんはなんというか、僕の周りにいないタイプ。全く初めて出会う人種という感じだから、全てが興味津々なんです。僕にとって本城さんは、社会人としてのメンターだと思ってるんですよ。僕はよくも悪くも学問一筋の学者だから、しばしば本城さんにアドバイスもらって、社会人にようやくなろうとしている(笑)。今、そんな感じです。これからもメンターとしてよろしくお願いします(笑)。 

岩瀬さんとは出会って2年ちょっとかな。安定の信頼感です。どこに出しても恥ずかしくない、じゃないな(笑)、どこに出しても期待以上で、軽井沢風越学園が目指している教育の魅力を伝えてくれる。サマースクールの最終日に、岩瀬さんが保護者の方たちに4日間の説明をしていたときにも思ったんですけど、岩瀬さんの話し方は、聞いていて子どもたちの情景が活き活きと伝わってきて、温かい気持ちになるんですよね。まねしようとしても、なかなかできない。だから、どこに出しても恥ずかしくない(笑)。

2018年1月、スタッフ合宿にて。後ろ姿が苫野

岩瀬:哲学以外だと、急に言葉が雑になるなぁ(笑)。僕は、苫野さんって、あらためて頑固な人だなぁって。実践メインでやっていると、つい現場の現実と合わせて、ぶれそうになるときがあるんだよね。そんな時に苫野さんが、「それもいいと思うんですけど、やっぱりこうじゃないですかね」、と常に目指す学校像に戻ってくれるから、どんな場面でも絶対ぶれない。これから設立までも開校後もいろんなことが起きるだろうけど、航海するときの北極星のように最終的な方向は間違えないだろうなという安心感がある。考え尽くしたからこそだろうな。

あと僕は学校単位というか、どうしても近視眼的に物事を考えちゃうんだけど、苫野さんは常に社会を見ているんだよね。どんな社会にしたいかの苫野さんの考えを聞くと、あぁそうか、と視点が変えることができる。でも日常生活は無頓着なところがあったりとか、自己管理能力が低かったり(笑)。

 

苫野:ここですね、社会人として(笑)。

 

岩瀬:そのチャーミング具合がいいよね。一緒にやりたい人だなと、つくづく思う。一緒にやらなかったら、そのすごさと強さはわからなかったと思う。

慎さん(本城)は、やっぱり変わってますよね。僕もこれまで会ったことない人。一番感じるのは、物事を見て、そこで起きていることやみんなが感じてることを言葉で切り取るのが上手だなってこと。そうそう、その感じ!というのを、共感できる言葉で切り取れる人だなと思ってる。特に「軽井沢風越学園は港」っていう表現は、僕らが目指したいイメージって、まさにそれだなって思ったな。

あとは、パッと変えられるところ。こう思うんだけどと言うと、じゃあそうしよう、とこちらが戸惑うくらいに判断がすごく速い。どうしてそんなふうに新しい提案にパッと乗れるんだろうって、最初の頃は不思議で。まだどうしてかよくわからないこともあるんだけど、慎さんは、人の力とか人と人の関係の力、場が動くことを信じてるんだなーって思ってる。曖昧であるとか不確実であることに妙に耐性があって、いわゆるリーダーっぽくないリーダーな気がする。僕だったら物事を明確な状態にして安心したくなっちゃうし、不確実なことは確かめたくなっちゃうんだよね。

 

苫野:僕も不安体質で、つい焦るんですよ。そんな時に本城さんがいつも、焦らなくて大丈夫と言ってくれるので、あぁそうか、といつも思える。

 

岩瀬:あと、森のようちえん・ぴっぴで保育をした8年間って、慎さんにとって大きかったんだろうなって思う。マクロとミクロの両方を見れるから、そういうところでも苫野さんがさっき言ったように安心感があるんだよね。

昨日、そもそも僕はなんでこの学校づくりに参画したんだっけって改めて考えたら、僕は慎さんと一緒につくりたかったんだなって思った。きっと僕が思ってもいないようなことができるかもしれないって。僕が思っていることは、僕が思っている範囲でしかないからね。でも、だめなところもたくさんあるから(笑)。この一年一緒にいて、そういうところも含めて見れたことが安心感につながってるかな。

 

本城:学校づくりが本格化する前には、そうはいっても3人の発起人で進めるのって難しいかもなって、思ってた。物理的な距離も離れているし、それも等距離じゃない。僕とごりさんはしょっちゅう会えるけど、苫野さんとはそんなに会えない。3人ともが同じ情報を持っているわけでも、同じ動きをしているわけでもない。だから、いくら信頼できると思っていても難しかったり、不安というか、うまくいかなさみたいなことをもう少し感じるかなと思ったけど、それが特に感じなかったのは、意外だった。意外っていう言葉が適切かわからないんだけど。3人のことでストレスがなかったというのは、やっていてすごい楽だったな。

あとは哲学者ってもっと孤独っていうか、一人で考えるイメージだったんだけど、哲学者ってけっこう寂しがり屋なんだっていうのは、苫野さんを見ていてちょっと思った(笑)。それは僕の中での哲学者のイメージをくずしたよ。

 

苫野:それは「一般化のワナ」かもしれませんよ(笑)。

 

本城:ごりさんは僕が知ってる一年でいうと、けっこう変わってきたと思う。決めるスピードが速くなってるよね、たぶん。前はもっと時間かけて決めてた気がする。3人の関係性というか動きも変わってきたよね。2月のメディア説明会では事前に決めた順番どおりに3人が決められたことを話したけど、4月の地域向け説明会のときは自然に互いの言葉を受け取って繋いで話せた。あの感じがすごくしっくりきて、大丈夫だなって思えたかな。

 

岩瀬:3人でやることにストレスがないって、まぁまぁすごいことだよね。

 

苫野:僕は、自分の分を超えたことをしなくていいと勝手に思わせてもらっていて、それが僕にとっては本当にストレスがないんですよね。苦手なものは苦手だから。僕が苦手なことは、本城さんが僕の1万倍くらいでやってくれるわけです。二人が忙しい中で採用合宿を何度もやっていて、他のチームだったら自分もなんかしないといけないのかなって思うかもしれないんだけど、不思議とそう思わない。もしかしたら本当は思ったほうがいいのかもしれないんですけど。

 

本城:いやいや、いいの。苫野さんは、変わらない原理・原則を伝え続けるのが、一番大事。日々のことをやってると、ぶれちゃう瞬間ってやっぱりある。そんなときに苫野さんがぶれずに発信してることを見たり聴いたりするたびに、ハッと思い返すんだよね。

 

不確実な組織づくりを遊ぶように楽しむ

Q:今年、こんなことを期待している、任せたいということをそれぞれにお願いします。

本城:苫野さんとごりさんは何より、カリキュラムの原理・原則のところを任せたい。幼小中を貫く一つの原理が見えてくると、全体が見えてくる気がする。どんな学校?と聞かれた時に、まだ自分の言葉でばしっと言えない感覚があって。自己主導、協同、探究の3つの関係だけでは、どうも伝わりきってないなって感じる。

 

岩瀬:具体的なイメージで語る言葉がまだないんだよね。

 

本城:そう。いろんなひとを巻き込みながら原理・原則を固めて、2019年からは具体のカリキュラムづくりを迎えられるといいね。

 

岩瀬:慎さんには、慎さんにしか見えてない世界があると思うんだよね。これから組織づくりがますます大事になってくるから、そこを任せたいというか、一緒にやりたい。簡単そうで難しいのが、みんなでは集まる機会が少ないってこと。日常的に顔を合わせられないこの1年は、すごく難しいなと思ってる。苫野さんとは、慎さんが言ったようにカリキュラムの原理原則を一緒につくっていきたい。

 

本城:あと苫野さんとごりさんに期待したいのは、1年間健康でいることかな。ふたりとも病弱だから(笑)。

 

岩瀬:苫野さんに会ってから、僕は自分の体調に自信がついたけどね。

 

苫野:これでも、そうとう漢方で強くなりましたからね!

 

本城:こないだの細菌感染は漢方効かなかったじゃん。

苫野:自己管理がまだうまくいかないので(笑)。僕が慎さんに期待してるのは、いつも慎さんが言う、カリスマがひっぱっていくんじゃないリーダーシップ。これからチームができていく中で、ますます慎さんの腕の見せどころなんじゃないかなと思って、それを目の当たりにできることが楽しみですね。この学校づくりのやり方は、おもしろい。もしも僕がやるとしたら、こんなふうにはできなかったとすごく思うんですよ。

 

本城:すごくめんどくさいやり方をしてるよ。

 

苫野:勇気のいるやり方だと思うんです。不確実性への耐性、とごりさんが言ってましたが、もし僕がやるんだったら、「これが原理なんだ、みんなのことを愛してるから、とにかくこれでやってくれー!」って言うしかないですもんね(笑)。今回の動きは、一つの学校設立に留まらない教育システムづくりの社会実験だなと思っていて、純粋な知的関心としてもすごく楽しみなところがあります。

岩瀬さんは、集まってきている先生たちにとっての憧れだったり、見本だったりすると思うので、どういう形で関わるんだろうなって。

 

岩瀬:うん、そこは僕自身もどうしていくんだろうって思ってる。採用のプロセスで授業を見に行くと、正直言って形だけ真似してるなと思うこともあったんだよね。これまでの発信の仕方の何かが、うまくなかったんだろうな。軽井沢風越学圏を一緒につくる人たちとも、岩瀬のやり方じゃなくて、迷ったらカリキュラムの原理に戻ろう、ということにしたい。

ちなみに、慎さんはどうしてこんなめんどくさい学校づくりの方法を選んだの?

 

本城:僕は、松岡正剛が「フラジャイル 弱さからの出発」で書いてる「弱さの強さ」っていうのをすごく信じられていて。弱い、脆い部分をチームに組み込むことが、結果的に強さになるって思ってるんだよね。やろうと思えば、効率的にもできるし、意思決定のスピードも速くできる。でもそれって、折れやすかったりするんだよね。採用合宿とかあさのーとみたいに、ある意味めんどくさくて時間のかかるほうを選ぶ。そういうことをプロセスに組み込んでいくことで、僕が理想としていくところに近づいていくのかなという気はしてる。効率的とか強くやる方法もあるけど、それもしんどいし、やってておもしろくないと思う。

 

岩瀬:しんさんの理想の組織って?

 

本城:なんだろう。遊んでる感じが一番いいよね。かくれんぼに飽きたからどうしようか?、じゃあ鬼ごっこにしよう。それにも飽きたらルール変えてみようって、ずっと続くじゃない。新しい人が加わると、次のフェーズや他の遊びに移る人も出てくる。組織っていうよりは、そういう関わり方のイメージ。遊びって、組織化されてない。役割が変わって、場の中心も遊びによって変わる。その感じが好きなんだよね。

 

苫野:いい感じで先が見えないなぁ(笑)。

 

岩瀬:そういう状態にあることに慣れてきた気がするよ。半年前とかだったら、焦って決めちゃいたいっていう感じはあった。今はそういう焦りはないし、不安っていう感じもないんだよね。今は一緒にやっていて、ほんと楽しいなっていう感じがしてる。

(2017/12/20 鼎談実施)

経営の本城、実践の岩瀬、哲学の苫野という役割分担で始まりましたが、一年を経て少しずつ遠慮がなくなり互いに越境しあう様子が垣間見えます。たとえ不確実で先が見えないことがあったとしても信頼しあって前進できるのは、互いがどんな人間なのか知り合う時間をめんどくさがらずに積み重ねたこと、目指す学校像を信じられていることが大きいです。開校までにどのように関係性が深まっていくのか、新しいメンバーと3人の関わりも、今後紹介します。