子どもと一緒に読みたい本 NO.9
『一緒に冒険をする』

『一緒に冒険をする』
(著:西村佳哲、弘文堂)

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今回ご紹介する本は、どちらかというと大人向けではありますが、中学生くらいであれば楽しめるような気もします。もしかしたら、こんな大人たちがいるんだ!と新種の生き物を発見したような喜びが、あるかもしれません。

2015年に奈良の図書館でおこなわれたフォーラムで話された”9人の働き方・暮らし方・未知のものへ向かう楽しさのインタビュー”です。まだ学校をつくるつもりのなかった本城の2014年11月時点のインタビューも紹介されています。本を読んだスタッフが、心に響いた一編と、その理由をご紹介します。

「そもそも、生きていることは変わってゆくことなんだろう。仕事も生活も2度とないことばかりで、誰も同じところに留まっていない。準備が要らないわけじゃないし、ルートも考えるけど、働くことも暮らすことも冒険なのだとしたら、辿り着く先がわからなくても不安じゃないし、望まない出来事に見舞われても、誰のせいにも出来ないしする必要もない。」(p.253 あとがき)

皆さんのインタビューやあとがきを読みながら、私たちの学校づくりもまた、冒険なのだと思いました。4月に参画した当初はその冒険の先が見えないことへの不安が大きかったのですが、今は日々目の前で起こる出来事や自分自身の変化のプロセスを純粋に楽しめるようになった気がしています。これまでの仕事では誰かが描いたものを形にしたり、すでにあるものをより良くしていくことが中心でしたが、新しく学校をつくるのはそれとはまったく違う仕事だなと感じています(どちらが良い悪いというわけではなく純粋に違うなと)。以前は目指す方向へどうすれば早く近づけるかに意識が向いていましたが、様々な経験を経ている設立準備メンバーと一緒に過ごす時間の中で、ここではそんなに焦らなくてもいいのかもと思えるようになってきました。もちろんこれからいろいろと考えて行動して準備をしていきますが、子どもたちを前にするときっと思わぬこともたくさん起こる。そして、子どもたちは日々変わってゆく。そんな毎日を一緒に楽しんでいきたい。1ヶ月を軽井沢で過ごしてこの本を読んだ今、そんな気持ちでいます。(奥田麻依子)

「しかも向かい合って付き合うというのは、一方通行でなく、相互のものじゃないですか。だからみんなも、「この人が面白い」と思って本当に向き合うことを意識して付き合っていったら、とてつもない世界が見えるんじゃないか!と思い始めちゃったの。
ー「向き合う」って?
時間をとる、でもいい。その人に時間をかける。(中略)方法はそれぞれだと思うけど意識して対峙する。ちゃんと丁寧につき合おうって。それをやることが家族だな、と思って。」(p.213 高山英樹さん)

実はこの本のもととなっている奈良のフォーラムに参加していました。どの一編を選ぼうかと、奈良での場を思い出しながら読んでいたら、益子で暮らす高山一家に至りました。苫野が自由について、“生きたいように生きられる”、と表現することがありますが、高山一家はまさにそれを体現している気がします。えっ!と思うような大変そうなことも、とても楽しそうに進んでゆく。ご紹介した箇所は、その楽しさを支えている根っこのように読みました。奈良の場で話を聴きながら、私もこんなふうに大切にしたいことを自分の中心に据えながらずっと生きてゆきたい、という思いがぽっと灯り、心がほかほかしたことを思い出します。このインタビューの最後に、「話をきいて、どんどん体温が上がってきたというか、どんどん熱くなってきて。『着すぎてるのかな』と思って脱いでみたんですけどあまり変わらない(笑)。」という参加者の言葉が紹介されているのですが(1月なのに、彼は半袖でした)、まさに私も!まるでキャンドルリレーのよう。本を読んで、またほかほかしました。(辰巳真理子)

各地で出版関連イベントも開催されていますので、タイミングがあえば、ぜひどうぞ。著者の西村さんからも、一言メッセージをもらっています。

大江健三郎さんの本に『日常生活の冒険』という一冊があります。30年くらい前、タイトルに惹かれて読んでみたけど、ちょっとよくわからなかった。「タイトルで十分だった!」、ということなんでしょうか。チョモランマに登ったり、ユーコン川を下ったりすることだけが冒険じゃあない。数年前、当時の本城さんの現場(ぴっぴ)を訪ねて、しばらくすごして。「子どもたちは毎日やってんだな」「やってたわ、自分も」と思いましたね。それを大の大人も、一緒にやる。毎日のように。あたらしい現場づくりに、遠くから関心を寄せています。(西村佳哲)