子どもと一緒に読みたい本 NO.6
かえるくんとがまくんシリーズ

かえるくんとがまくんシリーズ
『ふたりはともだち』『ふたりはいっしょ』『ふたりはいつも』『ふたりはきょうも』
(著:アーノルド・ローベル、訳:三木卓、文化出版社)
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今回、原稿依頼にあたってのリクエストは、「クリスマスにちなんだ本」でした。

「おっ、これは簡単に書けそう!」と思ったんですが、よくよく探してみると、なかなかいい本がない…泣。実は、自分自身がクリスマスとは無縁の子ども時代だった(パーティもプレゼントもない家庭だった)ので、クリスマスというものがまったく印象にないんですね。まあ、大人になって恋愛とか意識しちゃうと、それなりに身近にはなってきましたが、心の中で「けっ!クリスマスがなんぼのもんよ」的な悪態ついている斜めな青年が12月の東京の暗闇に一人つぶやく姿を想像してください。

さて、そんな斜めな青年も結婚し、子どもが生まれます。子どもが生まれると、このクリスマスというのは、年間最大のイベントとして、心して挑まなければならないものだということに気付きます。暗闇に向かって一人つぶやいている暇はないのです。

子どもたちにとってのサンタクロースってなんなのでしょう。サンタさんにプレゼントをお願いしているときのキラキラした目、プレゼントをもらったときの信じられない!っていう目、ドキドキワクワクしてふとんの中に入ってるんだろうなぁ。まさにこのとき子どもたちはファンタジーの世界に入っているんだけど、本人たちはほんとの世界だと思っている。ひとつの歴史や時空を超えたファンタジックな「物語」の世界に、世界中の子どもたちが入っている。この夢、いつまでもこわしたくないなぁ。

そんなときに、子どもと一緒に、クリスマスやサンタさんの絵本や本を読みたいですよね。親子でその世界にひたりたい。そんな絵本や本はいっぱいあります。図書館に子どもと一緒に探しにいくのもいいですね。たぶん今、どこの図書館でも、クリスマスフェアをやっていると思うので、ぜひ足を運んでみてください。

この原稿の依頼を受けたとき、私はちょうどオランダで研修中だったため、実際に本を探すことができませんでした。しばらくすると、オランダはシンタクラース(Sinterklaas。サはシ、ロはラで間違いではないので安心してください)がスペインから船で上陸し、各地を回って国中が大盛り上がりの状態。大人も子どもも12月6日に向けて大忙し。(シンタクラースとクリスマスは別物のイベントです)オランダの小学校でも、盛んにシンタクラースの絵本を読み聞かせしていました。こうやって本の世界から受け取ったものを、子どもは自分の物語として書き換えていくんだろうなと思いながら聞いていました。

うーん、でも何を紹介しよう。ネットで調べてもよくわからないし…。そして、あきらめました。担当の方に、「クリスマス関連の本は無理なんで、関係ないのにします」と伝えました。今まで紹介された本を見ると、低学年向きの本がないので昨年度(小学校2年生担任でした)子どもたちが読んでいた本の中から紹介することにしました。ちょうどそんなとき、研修の講師がひとつのお話を読み聞かせしてくれました。それがこのアーノルド・ローベルのかえるくんとがまくんシリーズの中の一編だったのです。「あ!これだ!!」とひらいめいた私は、同時にある勝算も抱きました。

このアーノルド・ローベルのかえるくんとがまくんシリーズは、全部で4冊あります。最初の『ふたりはともだち』が刊行されたのは1970年です。50年近くも世界中の子どもたちに読み継がれてきた名作です。ですから、このお話は、今の親世代の方も自分が子どものときに読んだことがある人が多いはずです。読んだことがある人が多いはずと確信できるのにはもうひとつ理由があります。それは、この『ふたりはともだち』の中にある「おてがみ」というお話が、2年生の国語の教科書(光村図書)に掲載されているからです。

手紙を一度ももらったことのないがまくんの悲しみを知ったかえるくんは、急ぎ家に帰りがまくんにお手紙を書きます。その手紙の内容、それを聞いたときのがまくんの感嘆の言葉、二人で手紙を待つ幸せな時間、なぜかたつむりに配達を頼んだのかという不可解な行動(笑)、小編ですがとても素晴らしい作品です。友情の大切さを、大上段に振りかざしているわけではなく、日常のほんとにささいな出来事の中で、二人が友情を紡いでいくお話です。おうちの人も、自分が子どもの頃に読んだ時の思い出などをお話しすると子どもも喜ぶと思います。

私は最初このお話が好きではありませんでした。「教科書」と聞いただけで憤怒の炎が燃え盛るというけっこうアブナイ時代があったので、あまり興味をもてませんでした。でもあるとき、図書室で「おてがみ」の入っている『ふたりはともだち』の本を読んで、一気にその炎を消し去りました。おもしろい。泣ける。笑える。他のシリーズも読みました。子どもにも紹介しました。あるとき、読み聞かせボランティアのお父さんが読んだとき大ウケで、それから私も何編か読み聞かせをするようになりました。

なぜ、この本は子どもたちに好かれるのか。私は、がまくんのキャラ設定にその原因があると思います。子どもはがまくんを「自分を映す鏡」のようにして読んでいる(聞いている)んじゃないかな〜と思います。がまくんはちょっと残念な子どもで、いろいろとくじけたり、不安になったり、すねたり、いじけたりと、うまくいかないことが多いんです。そのひねくれ方が妙にリアルで、そこに自分の姿を投影する子どもは多いんじゃないかなと思います。「そうそう」とか、「あるある」とか。物語は、これらが解決するときもあれば、あれれれ〜って感じで終わるときもあって、そこらへんのところも「あるある〜(笑)」なんじゃないかなと思います。

かえるくんはちょっと大人でしっかり者。そんながまくんを励ましたり、勇気付けたり、一緒になって悩んでくれたりしてくれるんだけど、でもやっぱりちょっとぬけているところもあって、そこがとてもユーモラスです。そして、この二人はゆるやか〜にあたたかい友情で結ばれているところが子どもたちには嬉しいんじゃないかなと思うんです。ぜんぜん説教臭くなくて。

学齢的には低学年向きの本ですが、読み聞かせなら幼児でも楽しめると思います。また、低学年の子にとっては、読み聞かせから一人読みへと移行するのに最適な本とも言えます。いくつかお話を読み聞かせした後、一緒に読んでみる。そしていつか自分一人で読んでみる。そんな感じの流れを意識しながら4冊読んでみるといいかもしれません。

さて、勝算の話。
実は、オランダでハッと思い出したんです。確かこのシリーズにはクリスマスのお話があったはず!日本に帰国して読み返してみると、はい、ありました。『ふたりはいつも』の中の「クリスマス・イブ」というお話です。出だしはこんな感じです。

『クリスマスのばん、がまくんはごちそうをたくさんつくってかえるくんをまっています。でもいつまでたってもかえるくんはやってきません。しんぱいになったがまくんは…』

この後のがまくんらしい行動がとてもおもしろく、ラストシーンの二人っきりの場面のほんわかする感じがたまりません。いいなぁこの二人、こんな友だちほしいなぁって、子どもは思うはず…。ほらほら、読みたくなってきたでしょ?

(甲斐崎博史)