子どもと一緒に読みたい本NO.5
『二分間の冒険』

『二分間の冒険』(岡田淳、偕成社の創作)
amazon)(楽天ブックス

「読書好き?」

ぼくが小学校で学級担任をしていた頃、1学期のはじめに必ず聞いていた質問です。好きと答える人は半分弱ぐらいだったでしょうか。
「長い」
「おもしろくない」
「字が多すぎる(本なので当たり前だけど…)」
「ゲームの方がおもしろい」
そんな言葉が返ってくるときもありました。

読書が好きになるときってどんなときでしょう?
読むのがやめられなくなるような、自分にピッタリの本に出会ったとき。
ぼくはそう考えています。

本なんておもしろくない!固く信じている子に、よく紹介していた本のうちの1冊が、『二分間の冒険』です。

主人公の悟は、放課後の体育館で、人の言葉を話す話す黒ネコ『ダレカ』に出会い、見たことのない深い森の世界に連れて行かれます。驚く悟。もとの世界に戻してほしいとお願いすると、ダレカは、こういいます。

「かくれんぼさ。おまえは、かくれてるおれをみつけだす。そしておれをだいて、つかまえた!とさけぶ。そうすりゃおまえの勝ち。この世界の時間はおしまい。」
「おれは、この世界で、いちばんたしかなものの姿をしているよ。」

というわけで、悟はダレカを見つけるための冒険に出かけることになります。しかしこの世界は本の表紙にある一匹の大きな竜に支配されているのです。悟はもとの世界に戻れるでしょうか。いちばんたしかなもの、とは?

まるでロールプレイングゲームの中の主人公になったかのように、ファンタジーの世界へと引き込まれていく展開。ぼくは大人になってから出会いましたが、すっかり夢中になってしまいました。

ある年の6年生。卒業間近にこんな質問をしてみました。
「この2年間、たくさんの本を読んできたけれど、そのなかでも『私の一冊』を選ぶとするとどの本?」
その中に、5年生の一番はじめに読んだこの本を挙げた子がいました。仮にかずと君としておきます。かずと君の文章を紹介しますね。

自分の1冊・・・・『二分間の冒険』。
ブッククラブで読んだらすごくおもしろくて、読み終わったときは、「読書ってすごくいいなあ」って思った。
すっごくおもしろくて、ママにも姉にもすすめている。
でも、ママは読むひまがなくて脱落した…。絶対に読んでほしいのに…。
今、自分で読書は、ぼくは生きるため、世界を知るために必要だって思ってる。読書してから、どんどん読書したいとおもうようになって、国語とかも好きになった。
読んでるときは、すごくおもしろいのだと時間を忘れて、すいすい読んじゃう。ちょっとつまんないのだとなかなか進まなくて、つまんないからやめちゃう。
自分が本の世界とか主人公になってる感じ。家庭学習の時に一緒に読んだり、夜、ひまがあるときに読んでる。ソファーやカーペットに寝っ転がって読んだり、筋トレしながら読むときもある。たまにだけど…。

一番のお気に入りの一冊は、やっぱり『二分間の冒険』。それから岡田淳の本にはまって、ほとんど全部読んだ。心に残っている2冊目は、岡田淳の『選ばれなかった冒険』です。すごくおもしろかった。なんかゲームの中に入り込んで冒険して、現実の世界に戻ったり、ゲームの世界に入ったり…。おもしろくてすぐに読んじゃった。
オススメなのは『モモ』。先生にすすめられて読んだらすごく面白くて、ママに『この本おもしろいよ」って何回言ったか…。
ママ、ちょっと読む暇がなくて長くかかったけど、脱落しなかった。すごく面白かったからだと思う。

と、この本がきっかけで読書の世界を歩み始めたようです。(お母さんも巻き込まれていったみたいです)かずとくん、読書好きが高じて、布団の中で懐中電灯でこっそり照らして読んでいてお母さんに怒られた!と朝のサークルタイム(朝の会)で報告してくれたこともありました。かっこいい怒られ方だなーなんて思ったことを思い出します。

「よし!ではこの本を買って家の子に読ませよう!」と意気込んで手渡しても、「えー…」という反応にもなりかねませんよね。そこで「一緒に読まない?」と一緒に楽しんじゃうのはどうでしょう。「親子でペア読書」です。やり方は簡単。まず同じ本を2冊用意します。毎日一章ずつ読み(先は絶対読まない!)、2人で感想をおしゃべりする。ただこれを繰り返していくだけです。読む時間と話す時間を入れても30分もあれば充分です。

テレビで連続ドラマを一緒に見て、あるいは映画を一緒に見にいって、「今回はこうだったよねー!」、「どこおもしろかった?」、「続きこうなるんじゃないかなあ」、とおしゃべりするのと同じ感覚です。「夜の連続小説」なんて名付けても楽しそう。2人で、おもしろかったこと、考えたこと、自分とのつながりを感じたこと、疑問、続きの予想などなど、同じ本を楽しんでいる読者同士になって自由におしゃべりします。

ぼくの妻は、毎日お風呂で子どもと一緒に読んでいる本についておしゃべりするのを日課にしていたときがありました。娘はお風呂から上がると、「続き読む!」なんてことも。

本を2冊入手して、一緒に読み進めてみてくださいね。お菓子や温かい飲み物を用意しておしゃべりするのもステキです。読書が好きになる時、それは「読むのがやめられなくなるような、自分にピッタリの本に出会ったとき」と最初に書きました。もしかしたら「身近な大人がうれしそうに本のことを語っている姿」こそが、「ちょっと本の世界を覗いてみようかな」という気にさせるのかもしれません。

ところで「この世界でいちばんたしかなもの」って?
ぜひそれを探しに冒険の旅へ!

(岩瀬直樹)